日本における人と組織のシステム的変化に関する試論
昨日、こちらのイベントに参加した。
最近、僕は日本の人や組織(特に企業)がシステム的に変化するには何が必要なのだろう?とよく考える。これはその時その時で答えが変わったりするのだが、最近また考えが進化した感覚があり、このタイミングで言葉にしておきたい。
『ティール組織』の一つの価値に「既にある組織がティール組織に変わるのは極めて困難である」ことを示した点にあると思っている。本書が出るまでは、既存の企業(特に大企業)がこの手の全体性をベースにした組織に変わるのは、可能か否か?のような議論がしばしばあり、HR系の人たちは人や組織の可能性を大切にする人も多いので、「可」と見立てる傾向があった。
その点、『ティール組織』では、残酷かもしれないが、極めて困難であると言い切っている。僕もこれまでの経験から、大企業に所属する多くの人の発達段階や、人事など人と組織に関わる人たちの発達段階を鑑みるに、賛同する立場だ。
では、どのようなかたちで、日本の人と組織が変化していくのだろうか?以下は僕が考えるシナリオだ。
まず始めに、全体性や発達段階を成熟させていく活動にある意味、企業業績の向上活動以上に価値を置く経営者の出現が起点だと考える。そして、その次に、その経営者と共に働く経営陣の発達、続いてマネジャー、メンバーの発達を通じて、組織全体の発達段階が成熟し、最終的に全体性を志向する会社に変化していく。
さらに、その様子が周囲に波及することで、周辺にいる経営者が気づき始めて、全体性への旅をスタートさせる。この流れが加速すると、既存の企業で働いている若い人が、全体性を志向する企業に転職するようになる。ここで初めて大企業は優秀な人が次々に辞めていくことに危機感を募らせ、制度変更などに遅ればせながら着手するようになり、全体性を徐々に帯びていくようになる。そうすると、今度はその制度に対応するために大企業で働いている人も発達段階の成熟が求められる、そんなシナリオだ。
こうやって改めて思考を巡らせていくと、大企業が「ティール化」するのは経営者がコミットしないとやはりかなり難しそうだ。せいぜい「グリーン」止まりのような気がする。(それだけでもだいぶマシだが)今の社会における集合意識は「グリーン」までは顕在的にも潜在的にも求めている感覚はあるが、「ティール」は潜在的にOKでも、顕在的に色々な不安が立ち上がるのではないか。この不安を乗り越えるリーダーだけが「グリーン」と「ティール」の間にある壁を乗り越えていくのだろう。
以上を踏まえると、日本における人と組織がシステム的に変化していくためには、成人発達や全体性を志向する経営者を、質と量の観点でどれだけ支援できるか?に懸かっているのでは?というのが現時点の最新仮説だ。
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